老犬の介護と仕事の両立は、簡単ではありません。
夜鳴きや徘徊で眠れない。仕事中に転んで呼ばれる。昼間ひとりにしている間、苦しんでいないか気になってしまう。
そんな状態が続くと、「仕事を辞めるしかないのかな」「働きながら老犬の介護なんて無理なのでは」と考えてしまうこともあると思います。
結論から言うと、老犬介護と仕事の両立は、愛犬の状態・家族の協力・働き方・頼れるサービスによって大きく変わります。
ただ、いきなり仕事を辞める前に、ペットカメラ、家族や近所の協力、ペットシッター、老犬デイサービス、老犬ホームの一時預かり、在宅勤務や有給休暇など、使える選択肢を一度整理してみてほしいです。
この記事では、仕事をしながら老犬介護を続けるために考えたいことを、私自身の体験も交えながらまとめます。
※環境省・厚生労働省・獣医療関連の資料、ペット関連団体の情報などを参考にしながら、飼い主目線で分かりやすくまとめています。参照元はこちら。
この記事でわかること
・老犬介護と仕事の両立がつらくなる理由
・仕事を辞める前に考えたいこと
・昼間ひとりにする時の不安を減らす工夫
・ペットカメラ、シッター、一時預かりなどの使い分け
・在宅勤務でも介護がきつい理由
・後悔を減らすために準備しておきたいこと
老犬介護と仕事の両立は「全部自分でやる」と限界がきやすい
老犬介護と仕事を両立するうえで大切なのは、「仕事を辞めるか、全部ひとりで頑張るか」の二択にしないことです。
老犬介護は、思っている以上に生活へ入り込んできます。
ごはんを食べさせる。薬を飲ませる。水を飲ませる。排泄を支える。転んだら起こす。夜鳴きや徘徊に付き合う。通院する。汚れた体を拭く。
ひとつひとつは小さなことでも、毎日続くとかなり大きな負担になります。
環境省の高齢ペット向け資料でも、ペットの介護は一人で抱え込まず、家族と協力したり、かかりつけの動物病院に相談したりしながら、無理なく続けられる方法で向き合うことが大切だとされています。
これは本当にその通りだと思います。
私も今、仕事をしながら老犬介護をしています。とはいえ、在宅で、しかもパートタイマーなので、出社フルタイムの方よりはかなり調整しやすい環境です。
それでも、かなりきついです。
夜中に徘徊や夜鳴きで起こされると、そのあとは神経が張ってしまって眠れません。仕事中でも、転んで起き上がれなくなると呼ばれます。集中したい時や打ち合わせ中に対応が必要になることもあります。
在宅だから楽、というわけではありません。
家にいるからこそ、常に見えてしまう。常に気になる。常に手を止める。
このしんどさも、老犬介護と仕事の両立では見落とされやすい部分だと思います。

「犬の介護で仕事を休む」は制度上むずかしい場合が多い
老犬の介護で仕事を休みたいと思っても、法律上の介護休暇や介護休業がそのまま使えるわけではありません。
厚生労働省の介護休暇制度では、対象となる家族は、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母などとされています。
つまり、ペットは法定の介護休暇の対象家族には含まれていません。
もちろん、会社独自の制度として「ペット休暇」や「ペット慶弔休暇」がある職場もあります。上司や職場の理解によって、有給休暇や在宅勤務、時短勤務、中抜けなどを相談できる場合もあります。
ただ、すべての職場で理解が得られるわけではないのが現実です。
だからこそ、仕事を続けながら介護する場合は、
・有給をどのタイミングで使うか
・通院日は事前に休めるか
・急変時に早退できるか
・在宅勤務や時差出勤が相談できるか
・家族や外部サービスで日中をカバーできるか
を、早めに考えておくことが大切です。
言いにくい気持ちはとても分かります。
でも、ある日突然どうにもならなくなってから相談するより、少し余裕があるうちに「今後、老犬の通院や介護で調整をお願いする可能性があります」と伝えておくだけでも、選択肢が変わることもあるでしょう。
老犬介護で仕事との両立がつらくなる場面
老犬介護と仕事の両立で特につらいのは、介護が「時間通りに終わらない」ことです。
育児や家事も大変ですが、老犬介護も予定通りには進みません。
夜鳴き・徘徊で眠れない
一番きついのは、やはり睡眠不足です。
老犬になると、夜中に起きてウロウロしたり、鳴いたり、昼夜逆転のような状態になることがあります。
犬の認知機能不全では、睡眠と覚醒のリズムの変化、排泄の失敗、見当識障害などが見られることがあるとされています。
夜中に何度も起きる生活が続くと、翌日の仕事にかなり響きます。
眠れないまま朝を迎え、家事をして、仕事をして、また夜の介護がくる。
これが続くと、体力だけでなく気持ちも削られていきます。
夜鳴きや徘徊については、こちらの記事でも実体験をまとめています。



仕事中に何度も中断される
在宅勤務の場合、愛犬のそばにいられる安心感はあります。
ただ、仕事中に何度も呼ばれる大変さもあります。
転んで起き上がれない。水が飲めない。トイレに行きたい。鳴いている。どこかに挟まっている。
そのたびに作業を止めることになります。
私も、集中したいタイミングや打ち合わせ中に呼ばれることがあり、「今はちょっと待って」と思ってしまうことがあります。
そのあとで、ものすごく罪悪感がくるんですよね。
でも、仕事にも責任があります。
愛犬が大切だからといって、仕事中ずっと手を止め続けるわけにもいきません。
在宅でも、仕事と介護の境界がなくなると、心が休まる時間がなくなってしまいます。
昼間ひとりにするのが不安
出社勤務や外出がある場合は、昼間ひとりにする不安が大きくなります。
若い頃は普通に留守番できていた子でも、老犬になると状況が変わります。
・転んで起き上がれない
・水の場所が分からない
・排泄に失敗する
・狭いところに入り込んで出られない
・急に体調が悪くなる
こうしたことがあると、仕事中も「大丈夫かな」と気になってしまいます。
ペットカメラはとても役立ちます。
私も、どうしても外出しなければならない時のためにペットカメラを入れました。音と動画で留守中の様子が分かるのは、本当に助かります。
ただ、カメラで見えても、手を出せないんですよね。
転んでいるのが見える。鳴いているのが聞こえる。でも、すぐには帰れない。
このつらさは、使ってみて初めて分かりました。
だから我が家では、どうしてもの時は、信頼できるご近所さんに様子を見に行ってもらったり、スリングで抱っこして車に乗せて一時預かりにお願いしたりすることも考えています。
スリングについてはこちらで詳しく説明しています。

老犬を留守番させるときの状態別の判断と対策については、こちらにまとめていますので参考にしてみて下さい。


仕事を辞める前に考えたいこと
老犬介護が本当に大変になると、「もう仕事を辞めた方がいいのかな」と考えることがあります。
その気持ちは、とても自然だと思います。
愛犬の最期が近いかもしれない。 ひとりで逝かせたくない。 苦しんでいる時にそばにいたい。
そう思うのは、冷たいどころか、愛情があるからこそです。
ただ、仕事を辞める前に一度考えておきたいのは、お金と時間の両方です。
老犬介護は、思っている以上にお金がかかります。
動物病院の通院、薬、検査、療法食、介護食、オムツ、ペットシート、滑り止めマット、介護ハーネス、床ずれ対策、清潔ケア用品。
介護が進むほど、必要なものも増えていきます。
仕事を辞めることで時間は増えますが、収入が減ることで治療や介護の選択肢が狭くなる場合もあります。
もちろん、生活に余裕があり、今は愛犬のそばにいることを最優先したいという判断もあると思います。
でも、迷っている段階なら、まずは次の順番で考えてみてください。
・今の介護で一番つらい時間帯はいつか
・仕事を辞めなくても、その時間だけ誰かに頼めないか
・有給、時短、在宅勤務、中抜けは相談できないか
・ペットシッターや一時預かりを短時間だけ使えないか
・家族や近所に「緊急時だけ」お願いできないか
・介護費用を何か月分くらい見込めるか
「辞めるか、続けるか」ではなく、まずは負担が一番大きい部分を小さくすることから考えるのがおすすめです。
老犬介護と仕事を両立するための現実的な工夫
ここからは、仕事を続けながら老犬介護をするために使える方法を整理します。全部を取り入れる必要はありません。
今の愛犬の状態と、飼い主さんの働き方に合うものだけ選んでみてください。
もちろんこれで全て解決できるほど簡単なことではありませんが、もし少しでも参考になれば幸いです。
ペットカメラで様子を見る
ペットカメラは、昼間ひとりにする時間がある家庭ではかなり役立ちます。
映像で様子が見られるだけでも、不安が少し減ります。
できれば、
・スマホで見られる
・音声が聞ける
・録画できる
・暗い部屋でも見える
・温度や湿度も確認できる
といった機能があると安心です。
ただし、ペットカメラは「見守る道具」であって、「助けに行ける道具」ではありません。
転倒や急変が心配な場合は、カメラだけでなく、近くで助けてくれる人やサービスもセットで考えておきたいです。
老犬介護でペットカメラを使うメリットと注意点については、こちらの記事でまとめています。

家族や近所の人に「できることだけ」頼む
家族がいる場合でも、介護の温度感が同じとは限りません。
こちらは必死でも、家族にはそこまで深刻に見えていないこともあります。
そんな時は、「もっと手伝って」ではなく、具体的に頼む方が伝わりやすいです。
・夜中の見守りを週1回だけ代わってほしい
・朝の薬だけお願いしたい
・昼休みに水だけ見てほしい
・外出中にカメラで転倒が見えたら連絡するので、起こしに行ってほしい
このように、頼む内容を小さくすると協力してもらいやすくなります。
信頼できるご近所さんがいる場合も、「毎日」ではなく「緊急時だけお願いできるか」を相談しておくと心強いです。
ペットシッターさんに自宅で見てもらう
環境の変化が苦手な老犬には、ペットシッターさんに自宅へ来てもらう方法が合うことがあります。
ごはん、水の交換、トイレ掃除、見守り、散歩などのほか、依頼先によっては老犬の簡単な介護サポートを相談できる場合もあります。
自宅で見てもらえるので、愛犬はいつもの環境で過ごせます。
ただし、医療行為にあたることは対応できない場合があるため、投薬や介助の範囲、緊急時の連絡方法は事前に確認しておきましょう。
ペットシッターの選び方はこちらで詳しくまとめています。

老犬デイサービスや一時預かりを使う
「仕事中だけ見てもらいたい」という場合は、老犬デイサービスや一時預かりも選択肢になります。
日中だけ預けて、仕事が終わったら迎えに行く。
この形なら、ずっと預けるわけではありません。
飼い主さんは仕事に集中でき、愛犬は見守りのある環境で過ごせます。
ただ、老犬にとって移動や環境変化が負担になることもあります。
いきなり長時間預けるのではなく、見学、短時間利用、お試し利用から始めると安心です。
老犬デイサービスについてはこちらでまとめています。

老犬ホームは「最後の手段」だけではない
老犬ホームと聞くと、終身預かりのイメージが強いかもしれません。
でも、施設によっては一時預かり、ショートステイ、日中だけの利用に対応しているところもあります。
介護疲れが限界の時。 夜鳴きで家族全員が眠れない時。 仕事や家族行事でどうしても外出しなければならない時。 飼い主さん自身が体調を崩した時。
そんな時に、短期間だけ頼るという使い方もあります。
「預ける=手放す」ではありません。
愛犬との生活を続けるために、飼い主さんが少し息をする時間を作る方法でもあります。
老犬ホームについてはこちらで詳しくまとめています。


愛犬の介護レベル別に考える両立方法
老犬介護と仕事の両立は、愛犬の状態によって必要な対策が変わります。
まだ自分で歩けるが、見守りが必要な場合
この段階では、環境整備がとても大切です。
・滑り止めマットを敷く
・家具の角を保護する
・水やトイレの場所を分かりやすくする
・狭い場所に入り込まないようにする
・ペットカメラを設置する
足腰が弱ってきた子には、滑り止めマットや介護ハーネスも役立ちます。


転ぶ・起き上がれないことが増えた場合
転倒や起き上がれない状態が増えると、仕事中の不安が一気に強くなります。
この場合は、カメラだけでは不十分なことがあります。
・昼休みに一度帰れるか
・近所の人に緊急時だけ頼めるか
・ペットシッターさんに短時間来てもらえるか
・日中だけデイサービスを使えるか
を考えておきたいです。
「ずっと見ていなければ」と思うと、飼い主さんが追い詰められてしまいます。
見守りを自分以外にも分散できると、仕事中の不安が少し軽くなります。
夜鳴き・徘徊・昼夜逆転がある場合
夜鳴きや徘徊がある場合は、まず動物病院で相談してみてください。
認知機能不全だけでなく、痛み、不安、内臓疾患、視力や聴力の低下などが関係している場合もあります。
生活リズムを整える工夫としては、
・昼間に日光を浴びる
・無理のない範囲で体を動かす
・夜は安心できる環境にする
・徘徊しても危なくないスペースを作る
・必要に応じて獣医師さんに薬やサプリを相談する
などがあります。
夜に眠れない状態が続くと、仕事どころか日常生活もつらくなります。
この段階では、飼い主さんの睡眠確保も介護の一部として考えていいと思います。
食事・水分・排泄の介助が必要な場合
食事や水分の介助が必要になると、仕事前後の時間がかなり圧迫されます。
老犬は食べムラが出たり、水を飲まなくなったりすることがあります。
主食として使う場合は、ペットフード協会が示すような「総合栄養食」の考え方も意識しながら、愛犬の状態に合うものを選ぶことが大切です。
食べる力や飲み込む力が落ちている場合は、流動食や介護食を使うこともあります。
水分が取れない、食べられない状態が続く場合は、自己判断で粘らず、早めに動物病院へ相談してください。
関連記事はこちらです。




仕事をしている自分を責めなくていい
老犬介護と仕事を両立していると、どうしても罪悪感が出てきます。
仕事をしている間、そばにいられない。 外出中に何かあったらどうしよう。 最期の時に間に合わなかったらどうしよう。
そう考えると、胸が苦しくなります。
でも、仕事をしていることは、愛犬を大切にしていないということではありません。
働くことで、通院費や薬代、介護用品を用意できます。 自分の生活を守ることもできます。 少しでも安定した気持ちで介護を続けるための土台にもなります。
もちろん、どうしてもそばにいたい時期はあると思います。
最期が近いと感じる時、体調が大きく崩れた時、今だけは仕事より愛犬を優先したいと思うこともあるはずです。
その判断も、間違いではありません。
ただ、仕事をしている自分を責め続ける必要はないと思います。
大切なのは、「その時の自分にできること」を増やしておくことです。
ペットカメラを置く。 頼れる人を作る。 預け先を調べておく。 職場に相談しておく。 緊急時の動物病院を確認しておく。
完璧な介護はできなくても、準備をしておくことで、後悔を少し減らせることがあります。

まとめ|老犬介護と仕事の両立は、頼る先を増やすことから始めていい
老犬介護と仕事の両立は、本当に簡単ではありません。
夜鳴きや徘徊で眠れない。 仕事中に呼ばれる。 昼間ひとりにするのが不安。 仕事を辞めるべきか悩む。 愛犬に申し訳なくて、罪悪感でいっぱいになる。
そんな気持ちになるのは、愛犬のことを大切に思っているからです。
でも、全部をひとりで抱え込まなくて大丈夫です。
ペットカメラを使う。 家族や近所の人に頼る。 ペットシッターさんに来てもらう。 老犬デイサービスや一時預かりを使う。 職場に有給や在宅勤務を相談する。 動物病院で介護の方法を相談する。
こうした選択肢は、愛犬を突き放しているのではありません。
飼い主さんが壊れてしまわずに、愛犬との時間をできるだけ穏やかに続けるための方法です。
仕事を辞めるかどうかは、家庭ごとに答えが違います。
だからこそ、すぐに大きな決断をする前に、「今いちばんつらい部分」を少しでも軽くする方法を探してみてください。
老犬介護は、きれいごとだけでは続けられません。
でも、頼れる先を少しずつ増やしておくことで、また「かわいいね」「一緒にいようね」と声をかけられる余裕が戻ってくることがあります。
参考文献・サイト
・厚生労働省 介護休暇について|介護休業制度特設サイト
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/holiday/index.html
・環境省 パンフレット「共に生きる 高齢ペットとシルバー世代」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/r0109.html
・環境省 無責任飼い主にならないために
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2609/pdf/full.pdf
・アニコム ホールディングス株式会社 犬・猫の平均寿命は更に延伸、高齢犬・猫の診療費も調査~家庭どうぶつ白書2023公開~
https://www.anicom.co.jp/news-release/2023/20231219/
・J-STAGE 老齢犬における認知機能不全症候群に関する資料
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/26/3/26_119/_pdf
・一般社団法人ペットフード協会 ペットフードの種類
https://petfood.or.jp/knowledge/kind/
・老犬ケア 老犬介護と仕事の両立
https://www.rouken-care.jp/column/20190327/


