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老犬がご飯を食べないときは、まず「食欲が落ちていて食べたくない」のか、「食べたいのに食べられない」のかを分けて考えることが大切です。
たとえば、においを嗅いで離れるだけなら食欲低下の可能性があります。一方で、口に入れてもこぼす、むせる、飲み込めない、姿勢を保てない場合は「食べられない状態」と考えます。
この場合は、トッピングだけで解決しようとするより、ふやかし・ペースト食・流動食・シリンジ給餌・市販の高カロリー介護食など、食べられる形に変えることが大切です。
ただし、むせる様子が何度も続く、食後も咳が残る、呼吸が苦しそう、ぐったりしているといった時は注意が必要です。
その場合は、無理に食べさせるよりも、まず動物病院へ相談してください。
「おやつは食べる」「水は飲む」「寝てばかり」など、一見判断が難しいケースもありますが、原因によって対応は大きく変わります。
原因・栄養補給の方法・流動食やシリンジの注意点・受診の目安まで順番にわかりやすく解説していきます。
※獣医師や動物介護士・フードメーカー・ペット関連企業のwebサイト、研究論文などを参考にしながら分かりやすくまとめています。参照元はこちら。
先に確認|こんな時は無理に食べさせず受診を優先
次のような様子がある場合は、流動食やシリンジで何とか食べさせる前に、動物病院へ相談してください。
・24時間以上ほとんど食べない
・水も飲みにくい、脱水が心配
・食事中や飲水後にむせる、咳き込む様子が繰り返す、食後も咳が残る
・呼吸が荒い、ゼーゼーする
・嘔吐、下痢、ぐったりしている
・急に痩せた、立てない、反応が弱い
老犬は体力が落ちるのが早いため、「もう少し様子を見る」よりも、早めに相談した方が安心です。
老犬がご飯を食べないとき、まず確認したい「食べられない」サイン
「食べたくない」との違い
老犬がご飯を食べない理由は、大きく分けて
「食べたくない」
「食べられない」
の2つがあります。
この記事では、このうち「食べられない状態」に焦点を当てます。
「食べられない」とは、単に食欲がないのではなく、
・噛めない
・飲み込めない
・姿勢を保てない
といった身体的な問題や、病気による不調で「体が受け付けない状態」を含みます。
「食べたくない」については、こちらの記事で説明しています。

食べやすい食器・食器台や場作りについては、こちらもご覧ください。

「食べられない」と判断しやすい行動
「食べられない」場合は、食事中の様子にサインが出やすくなります。
例えば、
・口に入れてもポロポロこぼす
・噛めずに途中でやめてしまう
・飲み込むときにむせる
・食事の姿勢を保てず途中で離れる
・食べようとするが諦める
・水は飲むのにご飯だけ受け付けない
こうした様子が見られる場合は、「食べない」のではなく「食べ進められない状態」と考えられます。
放置するリスク
この状態を放置すると、
・体重減少
・脱水
・筋力低下
・体力低下
といった悪循環に入りやすくなります。
特に老犬は、一度体力が落ちると回復に時間がかかるため、早い段階で気づくことがとても重要です。
また、食事量が減っているときは、水分が取れているかも一緒に確認しておきたいポイントです。水も飲みにくそう、尿が少ない、脱水が心配な場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。

老犬が食べられない時の栄養補給|ふやかし・ペースト・流動食・市販介護食
食べられない状態が続くと、体重減少や脱水につながりやすくなります。
そのため、原因を確認しながらも、同時に「今の状態でどう栄養を補うか」を考えることが大切です。
いきなりシリンジ給餌に進むのではなく、
・まだ噛めるなら、まずはドライフードをふやかす。
・噛む力が弱いなら、ウェットフードやペースト食。
・舌ですくえない、口からこぼすなら、なめやすいテリーヌやムース。
・自力で食べるのが難しい場合は、流動食やシリンジ給餌。
…と、段階的に検討します。
ただし、シリンジは誤嚥のリスクがあるため、自己判断で急に始めるより、かかりつけの先生にやり方を確認してからの方が安全です。
老犬が「食べられない」主な原因
口の痛み・歯周病・顎の筋力低下(噛めない)
歯周病や歯のぐらつき、口内炎などがあると「噛むと痛い」状態になります。
また、加齢によって顎の筋力も落ちるため、以前と同じフードでも噛めなくなることがあります。
歯周病については、こちらの記事も参考にしてみてください。

嚥下力の低下(飲み込みづらい)
飲み込む力が弱くなると、食べ物をうまく喉へ送れず、むせたり飲み直したりするようになります。
この状態が続くと、「食べること自体が怖くなる」こともあり、食事量がさらに減る原因になります。
未消化のフードを吐く時の原因と受診目安についてはこちら。

首・足腰の筋力低下(姿勢の問題)
意外と多いのが「姿勢がつらい」ケースです。
・首を下げ続けられない
・立っているのがつらい
・途中で疲れてしまう
こうした理由で、食べる前に諦めてしまうことがあります。

うちの犬がそうでした。

フラフラして立ってるの疲れちゃう。。。
嗅覚・味覚の低下(食べ始めにくくなる)
嗅覚や味覚の低下により、食べ物の香りや味を感じにくくなり、食べるきっかけがつかみにくくなることがあります。
この状態は、「食べたくない」と「食べられない」の中間にあたるケースで、どちらとも判断しにくいですが、
わがままと決めつけるのではなく、香りを立たせる・食べやすくするなど、両方の視点から調整していくことが大切です。
病気の可能性(重要)
老犬の「食べられない」には、病気が関係していることも少なくありません。
特に、
・腎臓病
・心臓病
・消化器疾患
・腫瘍
などは、食欲低下の大きな原因になります。
「水は飲むけど食べない」
「元気がない」
こうした場合は、早めの受診を前提に考えることが大切です。
原因別にできる対策
噛めないとき
固形に近いごはんが難しくなってきたら、「どこまで柔らかくするか」を段階で考えます。
ペースト食は、ウェットフードやふやかしたフードをなめらかにしたものです。まだ自分で舐め取れる子に向いています。
流動食は、さらに水分を加えてシリンジやスプーンで与えやすくしたものです。噛む力がかなり落ちた子、自力で食べる量が少ない子の栄養補給に使われます。
市販の介護食や高カロリー栄養補助食は、少量でもカロリーを補いやすいのがメリットです。手作りを毎回続けるのが大変な時は、市販品に頼ることも立派な介護です。
流動食の作り方やシリンジで与えるときの注意点、市販の介護食の選び方については、こちらの記事で詳しくまとめています。

ドライフードが難しくなった老犬向けの柔らかいフード選びについてはこちらも参考にしてみて下さい。

飲み込みづらいとき
姿勢がつらいとき
食器の高さや傾斜、足元の滑り止めだけで食べやすさが変わることもあります。食器台の高さや選び方は「老犬が食べやすい食器のおすすめと環境づくり」で詳しく解説しています。
食べ始めないとき
・トッピング
・少量頻回でフードを与える
トッピングについては、こちらの記事で詳しくまとめています。

我が家の19歳老犬の場合
うちの犬も、年齢とともに食事のときの様子が変わってきました。
我が家でも、最初は「食欲が落ちたのかな」と思っていました。けれど見ていると、食べたい気持ちはあるのに、舌ですくえない、口からこぼす、途中で疲れてしまう様子がありました。
その時期は、食器台の高さや傾斜を変えたり、ドライフードをふやかしたり、スープご飯にしたりと、段階的に形を変えていきました。
それでも難しい日は、トッピングやテリーヌ状の総合栄養食、市販の介護食に頼ることもありました。手作りを毎回頑張れない日があっても、食べられるものを探すこと自体が、その子に合わせた介護だと思っています。

やってはいけない注意点
無理に食べさせる
食べない時間が続くと、どうしても「何でもいいから口に入れたい」と焦ってしまいます。
ただ、むせや飲み込みづらさがある子に急いで流し込むと、誤嚥のリスクが高まります。
シリンジで与える場合は、寝たまま口に流し込まないことが大切です。上半身を起こし、口の横から少量ずつ入れ、飲み込んだことを確認してから次を与えます。
正面から一気に入れる、顎を上に向ける、むせているのに続ける、といった与え方は誤嚥につながる可能性があります。
「食べてほしい」と思うほど焦りますが、シリンジは便利な反面、やり方を間違えると負担になることもあります。初めて使う場合は、動物病院で実際の姿勢や量を確認してもらうと安心です。
誤嚥の対処方法については、こちらも参考にしてみてください。

薬を食事に混ぜる
薬を毎回ご飯に混ぜると、「このご飯は嫌な味がする」と学習して、食事そのものを避けるようになることがあります。
特に苦味のある薬では起こりやすく、食欲低下がさらに進む原因になりかねません。
投薬方法は薬の性質に合わせて獣医師に相談し、食事の印象を悪化させない工夫が必要です。
なかなか薬を飲んでくれない時の対処法については、こちらの記事で解説しています。

おやつだけ食べる=安心と考える
おやつだけ食べる状態は、軽い好き嫌いで説明できる場合もありますが、それだけで安心はできません。
口腔痛、嚥下負担、内臓不調などがあって、主食を受け付けにくくなっている可能性もあります。
「おやつは食べる=問題なし」と決めつけず、主食摂取量や全身状態をセットで考えましょう。
急な食事変更
食べてほしい気持ちが強いほど、フードの種類やトッピングを短期間で次々変えたくなります。
しかし急な変更は、老犬の胃腸に負担をかけ、下痢や嘔吐を招くことがあります。
変更は少量ずつ、反応を見ながら段階的に進める方が、結果的に安定して食べられるようになります。
療法食を食べない時にまず試したい切り替え方についてはこちらにまとめています。

受診の目安
すぐ受診すべきケース
・24時間以上ほぼ食べない
・嘔吐や下痢
・ぐったりしている
・呼吸がおかしい
老犬が24時間以上ほとんど食べられない、あるいは食欲低下に加えて嘔吐・下痢・呼吸の乱れ・強い元気消失が見られる場合は、当日受診を前提に動くのが安心です。
とくに「水は飲むけれどご飯を受け付けない状態」が続くときは、体の内側で不調が進んでいる可能性があります。
迷ったときほど「もう少し様子を見る」より「先に相談する」判断が、結果的に回復を早めることにつながります。
受診前に確認すること
・食事量
・水分量
・排泄
・体重
・症状の変化
受診前にメモしておくと、診察の精度が上がりやすくなります。
最低限、
(1) 何をどれくらい食べたか
(2) 水をどの程度飲んだか
(3) うんち・おしっこ回数と状態
(4) 体重の推移
(5) いつからどんな症状が出たか
は整理して持参するのがおすすめです。
可能であれば、食事中の様子(むせ、こぼし、姿勢)を短い動画で残しておくと、病院で伝わりやすくなります。
受診後の自宅ケア
受診後は、処方内容を守りながら「食べられる形」を維持することが大切です。
指示されたフード形状や量、投薬方法を自己判断で変えず、食事量・飲水量・排泄・体重を継続して記録します。
改善が乏しい、またはむせ・嘔吐・ぐったりが再び強まる場合は、次回予約日を待たずに再相談しましょう。

まとめ
老犬がご飯を食べない時は、「食べたくない」のか「食べたいのに食べられない」のかを分けて考えることが大切です。
食べられない状態なら、トッピングだけでなく、ふやかし・ペースト食・流動食・市販の高カロリー介護食など、食べられる形に変えていきます。
ただし、むせる・咳き込む様子が繰り返す、食後も咳が残る、呼吸が苦しそう、ぐったりしている時は、無理に食べさせず受診を優先してください。
「食べてほしい」と「無理はさせたくない」の間で迷うのは自然なことです。だからこそ、愛犬の様子を見ながら、安全に、続けられる方法を選んでいきましょう。
なお、食べられるものが少ない時は、必要カロリーから逆算して考える方法もあります。こちらも参考にしてみて下さい。

参考文献・サイト
・Nutrition and aging in dogs and cats
https://vetsci.org/DOIx.php?id=10.4142%2Fjvs.25222
・Evaluating effects of aging on dog olfactory performance


